【コラム 長崎と北九州と本城と僕と・・】

~北九州対長崎の本城J公式戦ラストの話~


 2-2と引き分けに終わったJ2第10節の北九州戦(2016.5.3)。試合はFW永井龍が劇的なバイシクルシュートを決め、北九州では小松塁、石神直哉がスタメンで出場。出場こそならなかったが花井聖、刀根亮輔もメンバー入りするなど、長崎のサポーターにとって思い入れの深い一戦になったのではないだろうか。そしてこの一戦は、恐らく本城陸上競技場で行われる「北九州対長崎」最後のJ公式戦となるはずだ。理由は、スタジアムで配布されたチラシを見て知っている人も多いだろうが、北九州市が建設をすすめるサッカー専用スタジアムが来年には完成することによる。

 正直に告白すると、本城を快適なスタジアムと思ったことはない。立地はともかく設備が古く、スタジアム内の施設も手狭で、いつも(ここでサッカーの興業をやるのは厳しいな)と思っていた。それでも嫌いなスタジアムだったかと言われれば、そんなことはない。それは・・このスタジアムには色んな記憶が詰まっているからだ。今日は少しその記憶を書いてみたい。

 V・ファーレンが本城で初めて戦ったのは、クラブ創設の翌年にあたる2006年。九州リーグの公式戦だった。チーム創設の年は2試合とも「集中開催」だったために、北九州で試合をしていない。「集中開催」とは、シーズン中4回、九州内の1県に全チームを集めて、2日連戦で2節分まとめて開催する九州リーグの開催方式のことだ。このために2005年は宮崎県と沖縄県で対戦しており北九州で長崎は戦うことがなかった。

 そして、2006年の初本城の試合は、長崎が九州リーグ優勝を決めた試合でもあった。当時の長崎には、原田武男(現U-18監督)、MF田上渉(現クラブ運営担当)、久留貴昭(現創成館高校サッカー部監督)、小嶺栄二(現国見高校サッカー部監督)などが所属。北九州はギラヴァンツではなく、ニューウェーブという名前で、アルゼンチンから帰国して2年目の池元友樹が所属していた。九州リーグでもJリーグでも池元は北九州の選手として長崎と戦っており、なかなか希有な選手といっていいだろう。

 ちなみにこの年、九州リーグを優勝した長崎は池元をJFL昇格のかかる「地域決勝大会」用に補強しようとしたが、結果的に池元はFC岐阜(当時 東海リーグに所属)に緊急加入し、「地域決勝大会」の長崎戦で決勝点をあげてFC岐阜をJFLに昇格させている。そして、長崎は岐阜に敗れて大会4位でJFL昇格に失敗し、岐阜が2位に入ったことで大会3位となり、JFL昇格を寸前で逃したのがファジアーノ岡山だ。何とも奇妙な縁がある話である。

 翌年の九州リーグの最終節で起きたドラマも本城が舞台だった。この年、最終節を待たずにリーグ3位が確定しJFL昇格がなくなっていた長崎だが、最終節で首位のホンダロック相手に意地と誇りを賭けて挑んでいた。この時、ロックが敗れれば優勝できるということで北九州の選手がスタンドから長崎を応援した。多分、本城が長崎のホームっぽくなった唯一の日だったと思う(笑)。ちなみに、この時のホンダロックにいたのは前田悠佑(現V・ファーレン長崎)、水永翔馬(現ツエーゲン金沢)だったりする。

こんな風にいろんなことがあったものだから、2013年にJリーグに昇格して本城で北九州と対戦した時は(九州リーグじゃん(笑))と思ったものだったし、見知った顔の北九州のサポーターと数年ぶりに会うのも楽しいものだった。

新しい北九州の専用スタジアムは素晴らしいもののようだ。1人のフットボールファンとして素直に胸が高鳴る。だが、そこで僕はフッと本城を思い出すのだろう。九州リーグに優勝したこと、北九州の優勝を複雑な気持ちで見届けたこと、永井のバイシクルシュートや、雨で濡れた体を近くの銭湯であたため、かしわうどんを食べて友人たちと笑っていた日々のことを。そして、それは新しいスタジアムへとつながっていく物語なのだろう。

そして、長崎と北九州の物語にはいつも本城陸上競技場という、古くて、狭くて、観客に優しくないけれど、思い出すだけで心が温かくなる・・
そんな舞台があったことを僕は、ずっと覚えているのだろう。



(了)

Posted by vista  at 23:36 │Comments(0)Web限定企画

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